5
Q1.0住宅の夏は涼しい
北海道から始まった高断熱の家づくりは、まもなく関東の高崎の暑さに直面しました。一般の家より暑くなるのです。私たちは高崎の家を10件ほど詳細な調査をして、平面的な通風ではなく上下の通風によって効率よく住宅の排熱をし、通風を確保するために開け放しでも防犯になり、風雨も避けられる窓を付けることで、夜の間に家中を涼しくして、朝になると窓は閉め切るという手法をつくり出しました。日射をしっかり遮蔽すると、日中は高断熱のおかげで外より低い温度を保つことができました。
しかし、高断熱住宅が西の方に広がり、次元の異なる暑さに再度直面しました。上のグラフを見てください。福岡、大阪は北関東の前橋に比べて、夜中の12時でも28℃以上の日が34~40日もあり、前橋や、東北の福島、秋田の7~13日に比べて、3倍もあるのです。
外気温が28℃を超えて、しかもほとんど風の無い状態では、窓を開けても通風しませんし、室内は内部発生熱で2~3度高くなりますから、こうした日は朝までエアコンを付けていないと暮らせません。もちろん日中は30℃を超えているので一日中エアコンが必要な日が40日もあることになります。
ここから、ローコストに家全体を快適に冷房する手法の開発が始まりました。今ではエアコン一台で全室冷房を実現できるようになりました。
写真の住宅:大阪府堺市
若夫婦が堺市の女性建築士に依頼して建てたこの住宅では、高断熱よりむしろデザインや材料にこだわって家づくりがスタートしました。建築士は密かにQ1.0住宅レベルで設計。住みはじめて若夫婦は、やがてエアコンを付け放しにすると快適であることに気付き、しかも電気代はあまり変わらないことから、全室冷房の暮らしを始めたという。室内は室温27~28度、湿度50~55%に保たれ、猛暑の夏でもサラサラ涼やかな暮らしをおくられているようです。
(詳細は「この家にしてよかった」Vol.3 市ヶ谷出版に掲載)