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5つの技術開発

2ねんぴ半分!!
Q1.0住宅

断熱性能と気象データに基づいて計算する省エネ住宅
断熱性能を高めるには、どこに重点を置けばよいか、日射をどのようにコントロールするか。理論的に、そして経済的な手法を採用していく。これがQ1.0(キューワン)住宅の設計の基本です。

省エネの理論を追求したQ1.0住宅

暖房時

暖房時は、逃げる熱と暖める熱が同じなら室温が保たれますから、

Q全部 = H暖房 + E日射 + E室内発生熱

となります。従って

H暖房 = Q全部 -(E日射 + E室内発生熱)

となります。このことから、暖房エネルギーを減らすには

  1. 断熱材を厚く施工してQを小さくする
  2. 換気の熱回収をする
  3. 日射熱を増やす(陽当たりの良い南の窓を大きくする)

冷房時

冷房時は、室内を暖める熱とエアコンで冷やす熱が同じなら室温が保たれますから、

H冷房 = Q全部 + E日射 + E室内発生熱

となります。暖房時とは逆に E は冷房負荷を増やします。この他に水蒸気潜熱負荷も冷房時は加わります。このことから、冷房エネルギーを減らすには、

  1. 断熱材を厚く施工してQを小さくする
  2. 換気の冷熱回収をする
  3. 日射熱を減らす(東西の窓を減らす。日除けをする)

式の記号について

図のQは、内外温度差1℃の時の各部位を移動する熱量を示します。

Q部位 = 部位の熱貫流率 × 部位の面積

換気だけは次式になります。

Q換気 = 0.35 × 住宅の気積 × 換気回数

移動する熱量は全部で

Q全部 = Q天井 + Q外壁 + Q床 + Q開口部 + Q換気

となり、これに内外温度差を掛けたものが暖房時は家から逃げていく熱、冷房時は外から入ってくる熱です。

快適に暮らすとお金がかかる省エネ基準住宅

省エネ基準住宅の暖冷房費

省エネ基準住宅は高断熱住宅とは言いますが、実はかなり低いレベルの住宅です。上の図は各地域の省エネ基準住宅で、冬は20℃、夏は27℃で家全体を暖冷房したときの暖冷房費です。これまで夏冬の寒さ暑さを我慢しながら払ってきた暖冷房費に比べて、北海道以外では1.5~2倍にもなります。これでは増エネ住宅です。これからの住宅は、大幅に省エネ性能を上げる必要があるのです。

開口部・外壁・換気の熱損失を削減する

省エネ基準住宅の部位別熱損失内訳(みなし仕様)

日本の省エネ基準はこの20年以上全く変わっていません。義務化が提唱されましたが結局見送られました。この遅れた省エネ基準住宅の熱損失Qを部位別に示したのが上のグラフです。見なし仕様と呼ばれる各部位熱性能の最低基準で、120㎡のモデルプランで計算しました。このQを小さくするためにはどうするか。グラフを見れば一目瞭然です。4~7地域の開口部の熱損失の大きさが際立っています。その他の地域でも開口部は大きく、そして外壁、換気の順です。これらの部位の熱損失を削減する必要があるのです。

暖冷房費試算について

省エネ基準住宅(みなし仕様)をQPEXで計算して暖冷房エネルギーを算出。暖冷房をエアコンで行うこととし、暖房時のCOPを1~3地域で2.5、3~7地域で3.0、冷房時のCOPは全地域4.0と想定して、消費電力に換算し、30円/kWhで計算した。

Point.1 開口部 ガラスを賢く選ぶ

空気層16mmにアルゴンガスを封入したペアまたはトリプルガラスが標準です。これを断熱サッシにはめ込んで採用すると、上記の省エネ基準住宅で暖房費が、 5~7地域で40%、4地域で20%、1~3地域で8%位削減されます。

ガラスの性能で熱損失を小さくするほかに、日射熱の透過率の高いガラスを採用することも、上記のE日射を大きくする意味で重要です。陽当たりの良い南の窓にはガラス面積の比率の高い大きな窓を設けることも重要なポイントです。

Point.2 外壁 210mm断熱外壁の威力

1~3地域で、暖房エネルギーを削減するためには、壁一杯の105mm断熱では全く足りず、さらに105mmを外に付加する210mm断熱工法が開発されました。

上記の見なし仕様モデルに、この外壁工法を適用すると、3~7地域では、床天井の断熱材を少し増やして、20%以上の暖房費が削減できます。1~2地域では元々が厚いので13%程度ですが、これ以上の性能の外壁も開発されています。私たちは、この付加断熱工法をローコストに実現することを可能にしています。

Point.3 換気 熱交換換気は掃除を楽に

Q換気を小さくするには、熱交換換気を採用します。換気のために排気する暖かい空気と、外から取り込む冷たい新鮮な空気との間で熱と水蒸気を移動させ、回収するのです。

この設備を使うに当たっては、フィルターの定期的な清掃が必要です。この清掃を容易に行える壁掛形の機器をメーカーに働きかけ、開発しました。この機器を使うと、4~7地域で20%、1~3地域では30%近い暖房費の削減が可能になります。

年間暖冷房費を半分以下にするQ1.0住宅

Q1.0(キューワン)住宅の構造
コスト:小
暖冷房費は半分以下!!

断熱材の厚さを十分に、窓の性能も高め、南の窓をできるだけ大きくとり、熱交換換気設備の採用で暖房費は大きく減り、これまでの半分以下で済むようになります。冷房費も窓の日射遮蔽を見直すことで大きく削減します。

UA値の小さな住宅が、必ずしも省エネ住宅ではない

UA値とは、床壁天井と窓の部位面積を掛けて、加重平均を求めた、平均熱貫流率です。従って、凹凸の大きな設計の建物で外表面積の大きな建物でも、断熱材の厚さが変わらなければUA値は同じになりますが、暖房エネルギーには大きな違いが生じます。

また、換気の熱損失を含みませんから、20~30%も暖房エネルギーを削減する熱交換換気設備を使っても、やはりUA値は同じです。さらには、窓にトリプルガラスを使うとUA値は小さくなりますが、ガラスが1枚増えて15%ほど日射侵入率が低下し、温暖地ではあまり暖房エネルギーが変わらないということも起きています。このように住宅の省エネルギー性能を評価する指標としては不適当な数値なのです。

暖房エネルギーの計算結果で住宅の省エネ性能を判断する

私たちは、最初から暖房エネルギー計算プログラムQPEXを使って、暖房エネルギーそのものを指標として住宅の省エネルギーレベルを定めてきました。当初、北海道で暖房エネルギーを半分にする住宅の熱損失係数Qが1.0程度で、本州でも2.0以下だったことから「Q1.0(キューワン)住宅」という名前が使われ始めました。Q1.0住宅には、気候区分に応じてそれぞれ4つのレベルを定めています。それは上の表のようになります。

表のレベルについて

室温20℃の全室暖房で、120㎡モデルプラン住宅において、省エネ基準住宅の暖房エネルギーを計算し、それに比べて対象住宅のQPEX計算値が、表のパーセンテージ以下であることで、レベルを決めている。

Q1.0住宅と省エネ基準住宅の暖冷房費の違い

このグラフはQPEXによる暖冷房費の計算結果です。実際の住宅も、QPEXの計算結果にほぼ同等の結果が得られています。

※省エネ基準住宅の夏の日射遮蔽は、東西南の窓にレースのカーテンを設置。Q1.0住宅は、東西南の窓に外ブラインドを設置する想定。

最低でもQ1.0住宅レベル-1での建設を⇒2023年『Q1.0住宅レベル-3を目指そう!』

新住協は、これまで、最低Q1.0住宅レベル1で全棟建設を目指そうというスローガンのもと、目指すことが出来る場合にはQ1.0住宅レベル3を実現しようと呼びかけてきました。しかし、住宅性能表示の断熱等級6や7が登場し、省エネに対する意識や社会状況も大きく変わってきました。そこで、今年度(2023年10月)の総会では、『全棟Q1.0住宅レベル3を目指そう』と更に協力にレベルアップした目標を打ち出し、これに向かっていくことを共通の認識として取り組んでいくことになりました!